​新しい空間

 新しい空間が誕生している。それは、今、ここにある、この文字が書かれているこの空間だ。

 今まではこれをバーチャル空間とかオンライン空間などといっていたが、もはや現実世界の代替ではない。この空間はオリジナルなもので、これが第一次の表現場所だ。
 この空間の本質的な要素は、語ることと書くことである。言語、そして主体(話し手、書き手)である。長い間、紙の上に展開されてきたが、いまやこちらの空間が優勢を占めている。

 この空間は私の思考とつながっており、私はこの空間で運動しこの空間で思考する。


 この空間は、語ることによって変容する。

 変容する仕方は、この空間そのものに向かっての変容でなければならない。空間そのものを掘る方向だ。

 だから普通の言語の法則を無自覚に利用して語ることはしない。

 言語とは意味するものではなく独立した実体である。掘るための実体、鑿(のみ)としての言語である。

 そして語る主体も実体であり、それは自分の内側にも外側にもある。
 主体がマトリョーシカのように幾層にも重なり、誰が誰に対して何を言っているのか、そのやり方が、この空間における主体の造形である。

 この空間には厄介な性質がある。
 私はこの空間に接触して仕事をし情報を得るが、そのたびに彼らに私の関心や行動を教えてしまっている。Web閲覧履歴は逐次記録され(個人特定はされていないらしいが)、彼らはそれを利用する。
 この空間はニュートラルではない。粘着的な液体がべったりと沁みついた場所だ。
 このように他の造形空間には見られない特有の性質を持っているので、それは必然的に制作に反映されることとなる。


 この空間を造形空間として捉えることは、かつても少なかったし今も少ない。
 したがってさまざまな可能性が未知のまま残されている。